「やぁ論理君。あはは、見ないうちにまたカッコいい見た目になったね」


その部屋には小太りの、アルパカのような睫毛が生い茂った大きな瞳を持つ中年の男が座っている。


声の出ない論理は、ぺこ、と行儀よく頭を下げた。


「あら、出なくなっちゃった?」


とんとん、と、丸々した首の喉元を叩くその男に、論理は頷き、頬の筋肉をひくつかせる。


「あ、笑うのは少し上手になったね。じゃあ、論理君の『話を聞こう』か」


男性にしては高い声の男に、論理はそっと目の前の椅子に腰を下ろし、鞄から小さなホワイトボードを取り出した。


論理と男との会話には、これが必要不可欠なアイテムなのである。


「何か、嫌なことがあったのかい?」


『ちがう、ちょっと、びっくりしたひょうしに』


全て平仮名で書かれたその、見た目のいかつさとは正反対の丸く可愛らしい文字に、男は優しく表情を綻ばす。