大きな足の裏が、砂利道から植木の緑が生い茂る先を越えて、白い建物へと吸い込まれていく。


律子と恋夜が会っているその一方で、銀髪と、眉毛に開いたいかついピアスを光らせて、論理は指無しの、ダマスク柄の手袋ごとデニムのポケットに手を突っ込んだ。


白い建物の中は、独特の薬物の香りが漂っていて、論理はそれが堪らなく嫌いだ。


しかし、この嫌な香りの先にある小さな扉を、論理は痛く気に入っているのだ。


長椅子に座ってぽわん、と少しの眠気に包まれていると『間壁論理』という少し変わった自分の名前が呼ばれる。


その、木目の入ったニスで艶々のドアには『心療内科』の文字。


そう、ここは論理の家の近くにある、大病院の心療内科の部屋である。