「だーっ!だから泣くなって!」


そんな律子にオロオロ、と体を震わせた恋夜は、躊躇いがちに、自らより小さな律子の肩を寄せ、そして壊れ物を扱うように抱き寄せ、包み込んだ。


「レッ……!?」


止まらない涙と、反比例して出てこない声と思考。


「も、バーカ、バカバカバーカ!あんた、本物のバカだぁ」


予想外の行動をとった恋夜に、冬の香りと嫌みの無い石鹸の香りの混じったその胸板越しに、律子は瞼を瞬かす。


「あんたがしたことは良くないことだし、イツのやり方も正しいこととは言えねぇけどよ、あのさ、あんたに分かって欲しいのは、あんたに不要なものなんか無いってことだよ」


恋夜の声はどこまでも柔らかで、声変わりが終わったその低い声は、律子の涙腺のベルの紐を、何度となく揺らしてくる。