「ヘイ!」


高架下に響く、ボールの音とステップを刻む複数の足音。


パスを求めるハーシーの声に、相手のディフェンスはそちらへ向かう。


その隙に空いた、ほんの小さなサークル内に潜り込むのはマカロンで。


そのサークルを作り上げるようにこの数分間ゲームメイクをしていたのは、コートの外にいるリッコ。


リッコが履いているハーフパンツのゴムのサイドに、双方の親指をそっと差し込む。


それは俺達にだけ分かるサイン。


俺はマカロンに向けてボールを放ると、ゴール下まで真っ直ぐ走り出す。


マカロンが、イエローコートでイツが見せたようにボボボ、と大きなパーカーの中にボールを隠して相手を翻弄する。


トン、とボールが地面に落ちたと同時にビュン、とマッチアップした相手の眼前に掌を突き出したかと思うと、右足の踵で俺の方へボールを飛ばす。


「ナイスムーブ!」


トン、と飛び上がると、スクリーンアウトを取っていた相手も同時に飛び上がり、俺のシュートを阻止しにかかる。



「……ま、ナイスムーブなのは、俺もじゃん?」


しかし、それは更なるフェイクでしかない。


そのまま空中で体を捻り、ボールをゴールから遠いところへ投げると、そこには、リッコのサイン通りに待ち構えたハーシーの姿が。


受け取ったハーシーは、持ち味である素早いシュートモーションで、ワンショット、ひょい、と手から解き放った。