さっきは全く下半身が使えていなかったのに、俺の低めのドリブルに対してしっかり腰を落としてくる相手の奴。


ホント、腐ってもバスケ部。本気を出せば形にはなるってことか。一年にしては出来てるような気がしないでもない。


「なーんだあんた、ハム、使えるんじゃん」


左右に揺さぶろうにも、俺より長身であるモブ男君を真っ向勝負では抜けない。


「普通に抜けないなら、非合法で行くしか無いか」


ダムダムダムダム、と早いドリブルで相手の視線を散らす俺に、体育館が再びざわつく。


「スゲェボール捌き。あいつ、ホントに素人かよ。何なんだよ」


「あんな不良が部活なんかやってたわけねぇじゃん」


散らしたところで、右側に体を傾けて抜く体勢に入ると、向こうも止めるために体を傾けて手を伸ばした。


……よし、今だ!


その傾いた相手の体の隙だらけの股にトン、とボールを投げた俺は、素早く体を逆サイドへ飛ばし、左手でボールを取ってそのままゴール下へカットイン。つまり、待っていたんだよね、この瞬間を。


ひょい、とボールを手からゴールへ放ると、体育館のざわざわは歓声へと変わった。