味方にプロが二人いるだけに、回せば得点することは苦じゃないけど。


「ラブ!」


イツから受け取ったボール、このボールを自分の力で得点しないことには、やっぱり、始まらないっしょ?


俺が他二人に比べて技量が無いのを読んだ相手は、執拗にディフェンスをしてくる。


俺は、タン、と後ろに飛ぶと、左足一本で立ち、股の間にボールを挟み、両手はカンフーの師匠ばりに決めて、精神統一。


「?」


相手もこれにはハテナマークの浮かんだ顔をして、動きを止める。


ふぅ、と一呼吸置いた瞬間、これまで激しかった音楽が、しっとりとしたギターの音に変わる。


この曲は、俺の好きな『グリーン・デイ』のバラード曲だ。


「……恋夜・ザ・ブルーバード」


考えるよりも先に、口が音を発した。つまり、曲にインスパイアされてしまったのだ。


そして、相手が股に挟まったボール目掛けて鋭い一撃を入れて体勢を低くしたのを見て、これまで厚く高かった壁の向こうを垣間見る。


するり、とボールを手元に戻し、垂直方向に高く、飛び立つ鳥のように高く上げ、地面に着いていなかった右足で、その地面を強く蹴り上げる。


他よりタッパが足りなくても、技量が足りなくても。


たとえ俺が地を這う蛇だったとしても、それは実はフェイクであり、俺は青い鳥のように、光輝く世界へ飛び立つ翼を持っている。