「どっか、行く?」



……え?



バッと顔を上げた。

瞬間、顔を鷲掴みされて、ちょ、あんたほんまあたしの扱い雑すぎとちゃう⁈



「こっち見んな!」

「はぁ? 意味わから、ん」



無理矢理ズラした手の向こうには顔を赤くさせて、不機嫌そうに唇を噛み締めた────照れている達郎。



これはあかんやろ。

威力ヤバいって。



顔からはずしていた手を自分の顔に戻す。

「戻すのかよ」というツッコミは気にしてられん。



傍から見れば、あたしが達郎の手に顔を押しつけているというなんともシュールな状況やけど、いいことにする。

いやよくないけど。



「で、行きたいとこあるなら行ってもいいけど」



いいん、かな。

あたしなんかに付き合わせても平気?



だんまりを決めこんでいると、「早く言えよ」とまた指に力を入れられた。



ぐあ、いいい言う、言いますって。



ふぅ、と息を吐く。

さっき掴まれた時はあたしの顔と同じくらいの温度やったはずの達郎の手が冷たく感じる。

……あたしがどんどん、あつくなるせい。