朝の自分に会えるもんなら言ってやんのに。

「寝坊しても、朝ご飯食べれんでも、遅刻してでも、とりあえず防寒具だけは忘れんな」って。



……ようするに、こんなアホなこと考えるくらい、今日は寒いってこと。

多分、うん、そういうことにしよう。






「……」

「立ち止まってなんやの」

「今日だけ! 今日だけだからな⁈」

「え、なんの話や、ね、ん……」



手を掴まれる。

え、え、なんなん?

ほんまなんなん?



「わっかんねーヤツだなー」



そう言って無理矢理、掌を開かせて、達郎は自分の手をあたしの手に絡めた。



痛いくらい強く握られて熱が伝わる。

体の奥からぽかぽかじんわり、広がってめっちゃ恥ずかしい。



なんやのもう。

ほんま、ほんま恥ずかしい。



ゆっくりと歩き始めて、うつむく。






「アホ太郎」

「うっせぇこしあん」

「……」

「……」

「あったかい」

「そりゃよかったな」