ざわめきは、遠かった。
光を跳ね返す、校内用のスリッパ。
踏みしめるのは、土と草。
真昼の明るさの下、おれのそばには、市ノ瀬しかいなかった。
「……ごめん」
手を、握ったまま。
後ろにいる市ノ瀬を見ないまま、そう言った。
何に対しての、ごめんかって。
拗ねて当たるような言葉を吐いたこと。
いきなり連れ出したこと。
ウワサの的にされて、迷惑かけたこと。
なんか、もう、全部だ。
…自分でも、整理できねーんだ。
なんでおれ、市ノ瀬のことになるとセーブが効かないんだろう。
息が恥ずかしいくらいに、弾んでいる。
市ノ瀬の息も、小さく小刻みで。
きっと市ノ瀬は、おれの後ろでワケがわからないという顔をしているはずだ。
好きでもないヤツに振り回されたあげく、こんなとこにまで連れてこられて、いい迷惑だって。
肩で息を繰り返していた、その時だった。



