あの日、追いかけた市ノ瀬の声。
頭の中で、その澄んだ声を思い起こして。
今日だけじゃない。何度も、覚えるくらい、体に染み込んでしまっていたくらい、リピートさせた声。
…想い浮かべて、それをたどるんだ。
ーであう あかいゆうひ
…もう、ないんだな。
これ全部、歌い終わったら。市ノ瀬との接点は、もう何にもなくなるんだ。
ーきみは なにをおもうだろう
…そもそも、接点っていうか。
市ノ瀬の練習場面に、偶然居合わせただけだし。
なんか強引に、歌、教えてもらっただけだし。
ーきみは なにいろになるだろう
…行事が終わってしまえば、みんなの興味も冷めるだろうし。
前みたいに、無理やり約束が取り付けられることもなくなる。ないんだ。でも、もういいんだ。
……それで、いいんだ。



