きみは金色


思わず、目を細める。


マイクで拡張された単調なアナウンスが、館内に響いた。



「次は、2年3組。曲目は、きみの色。指揮は、大門政行くん。伴奏は、市ノ瀬真子さんです――」



まばゆい光の中。


ガチガチに緊張した委員長が、全校生徒に向かって礼をするのが、かろうじて見える。


…今。市ノ瀬もきっと、同じように頭を下げているんだろう。


あの伸びた背筋を、ゆっくりと弧の形に変えて。


そして、真っ直ぐに戻して。前を見て。


あのきれいな姿勢で、ピアノのイスに腰掛けるんだ。



一瞬の、沈黙。

いろんな、たくさんの想いが詰まった沈黙。


静かな空間を切るように。というより、満たしていくように。



…市ノ瀬の前奏が、始まった。