声には出してないけど、CDの音源に合わせて、口だけを動かしている。
――市ノ瀬 真子。
学年イチかしこいことで、有名な女子だ。
テストの成績貼り出しで常に1位だから、地味な雰囲気のわりに、名前だけはよく知られてるヤツ。
なんでおれたちみたいなのがウヨウヨいるレベルの、この高校に入学したんだ?
っていうほどの、優等生。
おベンキョだけじゃなく、歌にもマジメに取り組みます…ってか。
そんなツッコミを、心の中に落とした。
「なあなあ、レオ。そういや今年のピアノ伴奏、誰~?」
5、6人で教室を抜け出して、連れ立って廊下を歩き出したとき。
ふああ、と本当にやる気のないあくびをしながら、裕也が聞いてきた。
…ほんとにクマそっくりだな、お前。
そんなことを思いながら、キュッと眉を寄せる。



