『飯田くんは、金色だよね』
2人っきりの放課後。すぐ隣で笑って、そんな風に言ってくれた市ノ瀬の姿。
今ではその情景も、フィルターがかかってぼんやりしている。
…夢だったのかもしれないな。
夢。現実には、もう起こらないこと。
そんな物思いにふけるヒマもなく。だれかが活きのいいタップで、バシバシッ!とおれの肩を叩いてきた。
横を向くと、珍しく覚醒した顔の裕也が、早口でまくし立ててくる。
「やっべ!やっべー!!レオー、歌えるかな、おれ!?」
「…歌えるだろ」
「えー!?どうしよー!?間違って女子のパート歌ったらどーしよー!?こないだちょっと練習してみちまってさぁ!!そしたらそっちの音程が残っててー!」
合唱コンクールとかめんどくせー、とか真っ先に言っていたはずなのに、全く単純なヤツだ。



