教室の出入り口。
まさにちょうどのタイミングで、市ノ瀬とはち合わせたもんだから、おれは「うあっ」と変な声を上げてしまった。
…うあっ、て。うあって何だよおれ。
おどろいた様子で一瞬、動きを止めた市ノ瀬。
小作りな顔がそっと、おれのことを見上げる。
あっ、あの2人。
そんな風にヒソヒソとささやく声。降りそそぐ、好奇の目。
教室内の視線が、おれたちに必要以上に集まってしまった。
「………っ、」
体が、不自然な形で固まる。
目が合ってしまったから、何か言わねーとって、思って。思ったけど。
聞きたいこと。話したいこと。
いくらでもあったはずなのに、この時は全然、出てこなくて。
「…あー、あの、さ…」
それでも何とか、話しかけようとしたときだった。



