「…カラオケー?おれらが出てったら委員長が泣くぞ」
「あはは、いいじゃんー。ガッショーコンクールもう飽きたー」
そう言いながら、もうすでに立ち上がっている希美。
希美の他にも、裕也を含めたいつものメンバーがゾロゾロ腰を上げて、
「んじゃ、行くべー」
なんて言っている。
「レオー」
「………はいはい」
…おれが行くことは、もう決定事項らしい。
おれがつるむヤツらは、いっつも強引で豪快だ。
勢いに流されて、仕方なく席を立ったときだった。
自然に顔を上げた、その視線の先。
1人の女子生徒の姿が、目に飛び込んできたんだ。
それを見たのは、偶然だった。
ピン、と。きっちり測ったように。
直角かってくらいに正された姿勢で、その女子は座っていた。
配られた楽譜を、しっかりと両手で持って。
それを、ていねいに目で追って。



