昨日見た、市ノ瀬のやわらかい表情。
声。歌声。見たもの、聞いたものが全部、ずーっとふわっふわ、おれの中に浮かんでる。
せっかく普通に会話できたんだ。
このまままた話さなくなるんじゃなくて、せめてアイサツくらいは交わせる仲になりたい。
っつーか、今日言う。「おはよ」って言う。
そう、心に決めていた。
おはよ。
おはよ?
…いや。おっす、のがいいか。
おっす?よっす?もうわかんねー。
教室との距離が近くなって、その度にバクバクが増していく。
どれでもいいんだけど。
どれにしても、たった3文字だし。短いし。うん、言う。言える。行ける。
…なのに。
「でっ、どうだった!?」
「………」
教室に入った瞬間、おれのささやかな意気込みは、速攻で吹っ飛ばされた。



