…声、やっぱきれいだよなぁ。
そう思った。
すき間がたくさんあるはずのボロい教室なのに、設備の整ったホールみたいに、市ノ瀬の声だけはきれいに響く。
とがったものを、まるくまるく。なめらかにしていくような歌声だと思った。
自分がこの空間にいるのが、すごく不思議だった。
いつもならバカ騒ぎして。
授業だってちょくちょく、サボったりして。
なのに今は教室に残って、歌の練習なんかマジメにやって。しかも、市ノ瀬と。
こんなことをしているのが…できているのが、ものすごく、不思議でくすぐったい。
どうしてだろう。
「しろいーくもーをーこえーてー」
「しろいーくもーをーこえーてー」
べつに、体育のときじゃなくても。廊下で、光を吸ってなくても。
おれの髪色よりずーっと、市ノ瀬。ピカピカ見えんの。
…なんでなんだろう。



