あれはみんな、ムダに熱くなる。
けが人続出で、保健室は毎年大盛況らしい。
「どーせ1位になったって、もらえるの表彰状だけだろー」
「学食1週間分タダとかにしろよなー」
「ビンボーガッコー」
あふれ出る文句。グチ。嘲笑。
ギャハハハ、と笑い声が起きる中で、おれも混じって笑う。
CDの音源だけが、途切れ途切れで流れるけど、もちろんだれも歌わなかった。
「ねえねえ、レオ」
さわがしい中。
トントンと肩をたたかれて、顔だけで振り返る。
クリクリに巻かれた長い髪をゆらす、同じクラスの女子。
三浦希美が、グッと顔を近づけて、耳打ちしてきた。
「ね、これからカラオケ行かないー?」
ムッとくるほど甘い香りのする息が、耳どころか、頬にまでかかる。



