「…あ、じゃあ」
スッと、市ノ瀬の細い指が、2つの机の継ぎ目に紙を送る。
「一緒に見よう。その方が…やりやすい、と思う」
市ノ瀬は、目を伏せたまま言った。
やっぱり緊張しているのか、くちびるに力が入っている。
「あ……ドーモ…」
おれの口にも力が入っているのか、出てきたのは棒読みの、ロボットみたいな声だった。
心臓が、跳ねるって。
ちゃんと自覚できるもんなんだなって、このとき思った。
…まつ毛、長えな。
そんなことも、思った。
道具なんか使ってない。
自然に描かれたゆるいカーブはきっと、このポジションじゃないと見られなかった。
ちょっとした感動と、再びせり上がってくる緊張。
沈黙の時間が、何十倍にも膨れ上がってるように感じる。



