せっかく弾いてんのに、みんなに無視されんの。
せっかく残って、時間さいて練習してんのに、むくわれねーの。
…そんなの、お前、さみしいじゃんか。
さみしいとか嫌だとか、市ノ瀬は絶対に、口にしないヤツだと思う。
みんなを悪く言ったりも、きっと、できないから。だから。
「…っ、あおーいーそらぁーにーっ!!」
ええい、やっちまえ。
このときの気持ちを言い表すとしたら、たぶん、そんなんだった。
ロクに覚えてない、課題曲。
おれはあらんばかりの大声で、歌い出していた。
音程なんて、適当もいいとこ。
無茶苦茶だ。
「きみーはー!はばたーくー!!」
ほどなくして、爆笑が起きた。
爆笑につぐ爆笑。床や机をたたいて、のたうちまわって笑っているヤツもいる。



