きみは金色


チームワークのカケラも見当たらない音楽室で、グッとくちびるを結ぶ。


ためらってしまうのは、今までずっと、自分が率先してサボってきた側だからだ。


…だってさぁ。いきなり真面目にやろうなんて、調子良すぎるし。


おれが説教なんかしても、絶対みんなポカーンてなるし。ただのギャグだろ。



はがゆい気持ちで、前を見る。


市ノ瀬の背筋は、伸びている。


でも少しだけ、いつもの直角より、角度が小さくなっている。



…市ノ瀬。



心の中で、呼びかけた。



全然、平気そうな顔で、座ってっけどさぁ。


こんなの絶対、しんどいだろ。


弾いてんの、おれがほめたとき、すっげーうれしそうだったじゃん。


すっげぇ、かわいい顔してたじゃねーか。