また1つ、要らない雑音が増える。
振り返る。市ノ瀬はまだ、どこにも行けずに座っている。
委員長の指示とも呼べない指示に合わせて、ピアノを弾いている。
クラスメートたちはそれぞれカタマリを作って、そのひとつひとつが、爆弾みたいにさわぎ声を上げている。
ギャハハ。ガハハ。ブワッハッハ。
濁点がついた笑い声が。本来響くはずの澄んだ音を、消し去ってしまう。
……聴けよ。
そう思った。
イライラして、はがゆかった。
…市ノ瀬の音、きれいなんだよ。
静かな、ちゃんと響くところで弾かせたら、もっともっと、何十倍もきれいなんだよ。
本気で弾かせてやれよ。
ちゃんと歌えよ。
立ち上がって、デカい声で怒鳴ってやりたかった。でも。



