あっという間に時間は経っていたらしい。
おれが教室に戻ると、クラスメートたちはもうすでに、全員着席済みだった。
そして教卓のところに立つのは、我らが担任イワコウ。
出入り口にいるおれを見つけると、イワコウは目線だけで「早く座れ」とうながしてくる。
まともな大人に見える、スーツ姿。
カッチリ締められたネクタイからは、いつものタバコ臭い、ゆるい装いは想像できない。
「イワコウ、今日はりきってるだろー!!」
「おっとこっまえ~!!」
自分の席についているクラスメートたちから、茶化すような声が飛んでいる。
「あのなー。卒業式くらいちゃんとした格好しなきゃ、他の先生たちキビシーんだよ」
あきれ声で答えるイワコウ。
もう1度おれに振り返ったイワコウは、なぜか不思議そうな顔をしてきた。
「…で?」
「は?」
「お前、市ノ瀬どこに置いてきたんだ?」



