……あの日。
2年の秋の、あの瞬間。
ホウキとチリトリ、そんな憂うつなもん持たされてることなんて、すっかり忘れてしまうくらいにさ。
ドアの向こうから、きれいな音が聴こえたんだ。
ピアノの音だった。
すごく、優しい音だった。
「……もっかい、聴きてーな……」
…多分おれ、書けるよ。
作文は苦手だけど。文章力なんか、全然ないけど。
真子のことならきっと、いっこいっこ、鮮明に書ける。
真子と、出会ったときのこと。
真子と、初めて言葉を交わしたこと。
初めて、一緒に帰ったこと。初めて、触れたこと。
真子との思い出。
……全部。全部。



