裕也は、卒業したら車の部品を作る会社で働くらしい。
就職にあたってか、茶色い髪も落ち着いた色に変わっていて、とんがり具合も大人しくなっている。
今の裕也の髪は、とがったタワシというより、重さで垂れ下がった麦の穂。
春を飛び越して、秋まで一気にエスケープだ。
「裕也はさ、実家継ぐんだろーなって思ってた」
「へ?」
「家、店やってんじゃん」
「あー……な。うん。いずれはそうなるだろうけど、1回くらい他で働くのもいい経験だしなーって」
おれだって少しは考えてんですよー。
裕也はそう言って、アゴを突き出したふざけた顔で笑う。
「…というわけで。一応社会人になるわけだからさぁ、春からはもっといいとこでメシ食えるぜー」
「ほー、期待しとくわ」
ニッと、歯ぐきまで見せて笑う裕也。
髪はサッパリしたはずなのに、やっぱり暑苦しさは健在していて。



