聞こえた自分の名前。
ハッと我に返ると、少しかがんで顔を覗きこんできた真子と、目が合った。
「ん?」
「卒業式の日には帰ってくるから。そのあと、いっぱい遊ぼうね」
なだめるような真子の口調。
「…………」
なんか、気持ちを見透かされてるみたいだ。
悔しくて、つながった手のひらにギュッと、力を込める。
…ばあちゃんも大事だけど、おれだって一緒にいられるの、もうあんまないんだけど、とか。
そんな風に妬いてしまう自分は、まだまだ子どもだなぁって思う。
「……泊まり?」
「えっ」
「泊まりで旅行も、行ってくれんの」
つないだ手の力はそのままに、すねた口調で真子に言った。
…どーせまた日帰りなら、とか言うんだろ。
そう思っていた、数秒後。
「……う、うん」
真子はほおを染めて、コクンとうなずいた。



