…おれは。
真子の方が大変なのに、大切な時期なのに、心配をかけている。
真子に、気を使わせている。
本当はおれが応援する立場じゃなきゃなんねーのに。
足かせにはなりたくないのに。
思い出す。白くて冷たいと思っていたのに、触れたときの背中は、あたたかかった。
あたためてやりたいと思うのに、おれの方が、真子から奪ってるみたいだ。
「………っ、」
1人きりの教室。息が詰まって、おれはくちびるを噛みしめた。
はやく、大人になりたいと思った。
余裕があって、自分で金もかせいで。
好きな女1人養えるくらいの、大人になりたい。
それができないなら、もっと昔に戻りたい。
昔っから頑張ってたら、真子と同じ大阪にだって行けたかもしれない。
…離れることを考えなくても、よかったかもしれないのに。



