倒れずに、少し向きだけ変えて床に脚をつけたままの机。
不服そうにおれを見上げているように見えて、よけいにイラ立ちが増す。
「ムカつく…」
焦りだけが振りかかって積もっていくのに、どうすることもできない。
突破口が、見つからない。
家に帰っても、どうせ1人だ。
聞こえるのはテレビの音と、遅くに帰ってくる母親の疲れた声だけ。
…真子の声が聞きたい。
受験とか卒業とか全部忘れて、ただきれいな声を、ずっとそばで聞いていたい。
…O大なんて、受かんなきゃいいのに。
遠くになんていかないで、ずっとここにいればいいのに。
ここにいろよ。
…いてよ、真子。
ふと、そんな最低なことを、思ってしまった。
『レオくん』
頭の中で鳴る、風鈴の声。
『…引かないよ』
音楽室で抱きしめたとき、おれを受け入れてくれた温度。



