まぁ多分、真子だったから借りれたのかもしれないけど。
何をしでかすかわからないような生徒には、絶対に音楽室を明け渡してくれたりなんかしない。
おれも歩いて行って、真子のとなりに立つ。
サラリと落ちる黒髪の、その間にのぞく首筋が白くて。
目を、細めた。
「…アレがいい」
「あれ?」
「合唱コンクールのやつ」
2年の時に歌った、"きみの色"。
おれと真子の、思い出の曲。
おれがリクエストした曲名を聞いて、真子はとても優しい顔になった。
その表情と同じ、優しい形で鍵盤の上に指を置く。
たまごを包んでいるような、ゆるやかな手の形だ。
「…うまく、弾けるかな」
真子が言った。
こんなに間近で、真子がピアノを弾くのを見るのは、初めてかもしれない。
また思った。
初めてだけど、懐かしいな。
久しぶりだ。合唱コンクールがあったことなんて、もうずっと昔のことみたいに感じる。



