そうしていつものように待ち合わせた、朝の教室。
「…真子の、ピアノが聴きたい」
向かい合わせでくっつけた机。
おれは鼻をすすって、正面の真子にそんなことを言っていた。
「えっ?」
予想通り、目を真ん丸くしておれを見る真子。
その目のまわり。輪郭。
夏とは真逆の季節になった今でも、真子には変わらず、余分な肉がついていない。
鼻の頭とほっぺたは、寒いせいか一段と真っ白で、見ていたら両手で包んでやりたくなった。
「ピアノ?」
「……言ってみただけ」
そう答えて体を折り曲げると、机に並んだ問題集の上にアゴをのせる。
…真子のピアノが聴きたい。
なんでだろうな。
そんなことをふと口にしてしまったのは、多分勉強づくしの毎日に、嫌気がさしているからだと思う。
余裕がなくて、心から笑えていない気がする。
誰といても。せっかく真子の、近くにいても。



