そんなことばかり考えていたら、自然に。勝手に、頭の中に映像が浮かんできた。
自分の口元に、ふわり。
市ノ瀬の指が、ふれるシーン。
自分よりもわずかに冷たい温度。
くちびるをそっと、開く。そして。
その細い、白い指を、ゆっくりと口に―――
パン!!
「…………っ、」
…いや。いやいや。
なにしてんだ。おれ。
想像してしまった生々しい映像に、おれは思わず、自分の両手で頬をはさみたたいていた。
思いきりやったから、けっこう痛い。ヒリヒリする。
顔を上げると、クラスメートの視線が見事全部、おれに集まっていて。
その中にはもちろん、市ノ瀬の丸い目もあった。
「あー……」
「…オイどうしたー。飯田―」



