落ち着いたあと、2人で塾から駅まで、並んで歩いた。
改札をくぐり、おれも真子のホームまで行くと、一緒に電車を待つ。
…日帰り旅行の最後も、こうしてたよな。そんなことを思い出す。
思い出すっていうほど、前のことじゃないのに。
ほんの何日前のことなのに、ずいぶん昔のように思ってしまうのはどうしてなんだろう。
夏なのに、風が冷たい。
1人じゃなくなった分増した体温のせいで、そう感じるのかもしれない。
「……あ」
小さく声を漏らす真子。
真子の視線を追った先、電車がやってくるのが見えた。
線路のずっと向こうにあったライトが、どんどん大きく、近くなっていく。
「もう1本、遅らそうかな…」
繋いだ手を確かめるように握り直しながら、真子が言った。
「…親、大丈夫?」
「…ん。1本だったら、大丈夫」
ホームについた電車が、また出て行くのを2人で見送る。



