イワコウは即答して、おれの頭をはたいてきた。
「いってぇ…」
音はしなかったけど、地味に痛いし。
イワコウの手はあんまりにも速いから、うまく避けられたことがない。
「いいからお前は、渡したの使ってマジメに勉強しろ。地元の私立でもこのままじゃ絶望的だぞ」
「…何かあると即たたいてくるの、やめた方がいいっすよ。結構、本気で痛いから」
イワコウは無表情のまま、おれの顔を見つめてくる。
足元に目線を落として、おれはつぶやいた。
「………痛い」
痛い。痛い。
でも、なんか今は。
逆にさぁ。イワコウがめちゃくちゃ硬いもんで、パッカーン!!て殴ってくれればいいのに、とか。
大人になりきれないおれを、蹴り飛ばしてくれればいいのに、とか。
自分が情けなくて。そんな風にも、思うんだ。
イワコウは何も言わずに、おれの肩を軽く小突いてきた。
いつもよりゆるい力だったから、なんか、ちょっとだけ、泣きそうになった。



