「…わたし、ね」
まつ毛を下に向けたまま、真子が言った。
「高校受験、失敗したの」
ザザン、ザザン。波の音は続いている。
作ったばかりの砂の城を崩そうとしているみたいに、手を伸ばして、引っ込めて。そして、また。
「もし…嫌なかんじに聞こえちゃったら、ごめんね。わたし…昔から、テストとか。昇級試験とか。そういうのは、落ちたこと、なくって」
「………うん」
「お父さんとお母さんに、真子はできる子だね、完璧だねって、言われてきた」
か細い声で、真子は続ける。
「ほめられるの、嬉しかったの」
砂の城に、そっと触れて。
守るように、両手のひらを当てて。真子はしゃべった。
ーー嬉しかったの、はじめは。
ーーでも、いつの間にか。嬉しい、が、完璧にやらなきゃ、に変わってた。
ーー弱いところを、誰にも見せられないようになってた。



