「〜ちげーよバカ!!」
「ええ~?」
「……べつに、そーゆーことしたいから誘ったんじゃないし」
そう答えると、自分のカップに残っていたコーヒーを、一気にのどに流し込む。
黒い液体はすっかり冷めていて、ずいぶん粉っぽい味がした。
直前にせまっている、高3の夏休み。
おれと真子が付き合ってからは、初めての。
でもそれは同時に、高校最後の夏休みでもあって。
…なんだろうな。
最近、急にそういうことを自覚してきたっつーか。
同じ学校。同じ教室。
同じ時間に訪れる授業に、休み時間。
無条件で一緒にいられるのも、あと半年くらいなんだよなー…なんて。
そんなことを、思ってしまうことがあるんだ。
だから、この最後の夏休みには、一生忘れられないくらいの思い出を作っておきたいと思った。



