きみは金色






「…市ノ瀬?」



顔をのぞきこまれて、ハッと息を飲む。


自分の部屋にいたはずが、目の前にあるのは、どアップの岩崎先生の顔。


そして、古い本の匂いがグッと肺を押すように入ってくる。



「……わっ、あの…」



先生は目がギョロッと大きいから、ビックリして心臓が縮む。


ゴクン、と飲み込んだ息が体の奥に落ちたころ、わたしはやっと我に返った。



…そっか。そうだ。


今は進路相談室で、2年生最後の面談の真っ最中だったっけ。


昔の思い出にトリップしている場合じゃなかった。



わたしを囲んでいるたくさんの資料や問題集が、『しっかりしろよ』って重圧をかけてきているみたいだ。


わたしは少し口元をゆるめると、怪訝そうな顔をしている岩崎先生に謝った。



「…ごめんなさい。ボーッとしちゃってました」

「めずらしいな。風邪か?」

「いえ、大丈夫です」



申し訳ない気持ちで、首を横に振る。