部屋に戻って、明日の用意をしている時だった。
そういえば赤ペンのインクが切れていたことを思い出して、わたしは引き出しの中を捜索することにした。
多分、予備があったはず。買っておいたはず。そんな記憶があったから。
でも、捜し物の赤ペンより先に出てきたのは…一体いつのものだろう。
金色の、色鉛筆だった。
どうしてここに1本だけ。しかも、金色なんて。
そう思うと同時に、ふいに、頭の中に彼の顔が浮かんだ。
みんなに囲まれて、笑う顔。
たくさんの光を髪に吸い込ませながら、昼の廊下を、歩いていく様子。
『そんなん言ってんなよ』
もし、嫌な思いを抱いたら。
飯田くんだったら、ハッキリそう言うだろうか。
言うだろうな。飯田くんは、物怖じしないから。
…だめなことはだめ。
…いいことはいい。
わたしが持っていない、線引きのものさしとマジックを、ちゃんと使いこなすひと。



