ドーナツを食べてもう少し話したあとは、駅まで一緒に歩いた。
真子とおれの乗る電車は、逆方向。改札をくぐってしまえば、もう別れのときはやって来てしまう。
改札に、定期を当てる前。
駅ビルの影になったところ。
誰もいないのを確認して、別れ際のキスをした。
片手を、真子の肩にのせて。
背丈が合うように、体をだいぶ折り曲げて、真子のくちびるに触れる。
こうして触れること。
手と手じゃないところで、体温を感じること。
…本当につい、最近のことだ。
真子が、キスをさせてくれるようになったのは。
腰が引けて、ほとんど拒んでいるような姿勢だけど。
でもくちびるだけは、なんとか残してくれる。そんなキス。
「……じゃ」
真子から離れたばかりの口を、動かして告げる。
「…うん」
「気をつけて帰れな」
「……うん」
「また明日な」



