振り返ると、茶色ツンツン髪のアホ裕也が、楽しそうな顔をおれに向けていた。
「お、いっちのっせさんじゃーん!!おはよーっ」
「お、おはよう…」
「なに朝から口説いちゃってんのーレオー。しかもなに真子とか呼んじゃってんのー?」
…いつから聞いてたんだよ。
あきれたのと照れたのと。半分ずつの表情が、顔面にのっかる。
そうしている間に、にぎやかグループのヤツらが登校してきて、ワラワラと教室に入ってきた。
「…あ、わたし…友だちのとこ行ってくるね」
緊張が丸わかりなくらいギュッと肩を縮こまらせたまま、真子は席を立った。
そして、裕也にぺこりと軽く頭を下げると、数人の女子たちがいるところまで歩いていってしまう。
「あーあー。行っちゃったー」
「……チッ」
「あっ!?今舌打ちした!?舌打ちした!?」
「朝っぱらからほんとウゼエ、お前」
顔を近づけてくる裕也を押しのけて、自分の席に戻った。



