膝の間に隠したままの顔。そこにある唇を、キュッと結んだ。
キュウ、と。
心臓と喉がしめつけられて、顔を上げることができなかった。
そんなおれに、市ノ瀬が慌てた風に声をかける。
「あの…っ、もしかして、気分悪いの?大丈夫?」
近寄ってきた市ノ瀬の、スカートのすそをつかんだ。
ピン、と生地が突っ張る感覚が、指先に走る。
「わっ」
小さく声を漏らした市ノ瀬は、バランスを崩してトトッと運動靴を鳴らした。
「飯田く……」
「わかんねーんだよ」
顔を上げないまま、くぐもった声で話した。
「こんなのはじめてだから、全然どうしたらいいかわかんねー」
「………」
「市ノ瀬がおれのカノジョになったのに、全然そういう風に思えねーんだよ」
不安なんだ。
無理やり付き合わせてんじゃないかって。



