呼び止めた。でも市ノ瀬は、振り返らなかった。
今にも走りそうな早足で、教室を出ていった。
シン、と、これ以上なく教室内が静まる。
授業時間より休み時間の方が静かだなんて、まるで逆転だ。
おれは息をついて、腕に身を寄せたままの希美を見下ろした。
希美はムスッとほおをふくらして、そんなおれから視線を逸らす。
「…レオが、悪いんだから」
小さなつぶやきと共に、希美はギュッとおれの袖をにぎった。
出てくる声には、怒りと、また別の感情も混じっていて。
「…っ、なんであんなウジウジした子がいいの!?」
「……」
「レオ、つまんないよ。ウジウジがうつったんじゃないの!?レオはそんなんじゃなかったじゃん?あたしは――」
クラスの注目の中、希美は声を詰まらせる。
悔しそうにゆがんだ顔を見ていたら、怒ったりできなくて。
逆に小さな罪悪感が芽生えた。でも。



