市ノ瀬はもうとっくに教室を出ていて、気だるい雰囲気のここには、市ノ瀬の気配は残っていない。
「どっちかに手ぇ挙げろよー!!」
これから行く場所をファミレスにするか、カラオケにするか。
裕也がそんな多数決を、取ろうとした時だった。
…おれの目って、すごいんだな。
3階っていう高い位置にある教室にいるのに。
窓の外。ずっと下に、ふと。市ノ瀬の姿を見つけてしまったんだ。
自然と、体が動いた。
急いで窓にかけよって、顔を乗り出して、黒い頭に声をかけていた。
「市ノ瀬…っ!!」
降りかかってきたおれの声に、ハッと足を止めた市ノ瀬。
くるりと周りを見回してから、おれがいる教室の方に、顔を上げる。
「…バイバイっ」
目が合った瞬間、おれはそう口にしていた。



