「足元に気をつけるんだぞ。滑って転ばないように」
お父さんが、新聞から目を離して顔をあげた。
「うん──」
「お父さんっ……!」
あたしが返事をしかけると、お母さんが慌てたように口を挟んだ。
瞬間、お父さんがなにかを思い出したように目を見開く。
「あ、ごめん……!」
……今日はあたしの高校受験の日。
滑るとか転ぶって、受験生にはふつう禁句だよね。
「大丈夫だよ。そういうの気にしないもん」
必死で謝るお父さんに、あたしは笑顔で言った。
受かるときは受かるし、落ちるときは落ちるんだから。
ケータイ小説 野いちご
君が泣いたら、俺が守ってあげるから。
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