……ずるい、なぁ。

どうせ無意識でやって、気づかんかっただけなんやろ。

そんで、一緒におる時に気づいとったら、またさっきみたいに誤魔化そうとして……ひどいこと言うんやろ。



わかってる。

わかってるよ。

いくらあたしがアホでも、さすがに学習する。



いつものパターンやし。

……達郎のことやし。






あたしを誰より遠ざけるのは、達郎。



関係ない、うるさい、黙れ。



そんなん言われたらさ、あたしどうしようもないやん。

引かれた線を無視して乗り越えられるような関係とちゃうんやもん。



周りはみんなニヤニヤしてて、微笑ましい、みたいな瞳。

でも、あたしはなんもわかってへんから。

不安が滲んで、心にしみて、痛い。






みんな、みんな達郎のせい。






でも、達郎の行動だけが、あたしのその苦しみから救ってくれるから。



「……アホ」






あたしが食べたその日のいちごみるくパン。

達郎から『あーん』されたからっていつもより甘く感じる、なんてマンガみたいなことにはならん。



────ただ。

いつもより特別で。

大事に、大事に口に運んだ。