ぐぎぎと睨み合っとると、くすくすと笑い声。
う、万里奈とかに見られてた。
「ふたりはいつも楽しそうだね」とか、やかましいわ。
「もう、あんちゃんたちうるさいよー。
鬱陶しいからケンカップルはさっさと帰って下さーい」
可愛い声でこの毒舌。
ちえがにっこり笑ってた。
怖い。
ふたりそろって「はい……」と返事を返した。
「ほなちょお待って。用意する」
「早くなー」
机の中から教科書やらノートやらを出しながら、チラッと達郎を見る。
学ランの上にコートは着ないでぐるぐる巻のマフラー。
12月頭やもんな、そこまで寒がりじゃない……むしろどっちかって言うと暑がりな達郎でもそんくらいはするよな。
「さみーっ」と言ってる姿が可愛くて、あかん。
さっきまでムカついとったのに、不意打ち。
キュンときた。
「腹立つわー」
「は?」
「ええねん気にしんとって!」
あたしもマフラーを口元まで巻いて、さらに耳当てまでつける。
寒いのとかほんま無理。
早よ春がきて、あったかくならんもんかな。