白い雲が流れる青い空の下。


小高い山の上に広がる芝生で、『私』と同じ目の色をしたお兄ちゃんは遊んでいた。


芝生の広がるそこでは、さまざまな色や形の花が咲いて、陽だまりがやさしい。


様々な花はどれも背丈が低くて、『私』はしゃがみこむようにしてそれらを眺めていた。


あっちを見てごらんとお兄ちゃんが指をさす方に目を向けると、そこには、大きな、大きな、木があった。


『私』はその木の方へと走っていった。


幹は太く、『私』が両手で包んでも全く届かない。


どこまで大きいだろうと上を見ると、思わず足が震えた。


その木の根元に座っていたお兄ちゃんは、そんな『私』を見て笑った。


この木はいのちの木だよ、とお兄ちゃんは言った。


『いのちのき?』


首をかしげる『私』を膝にのせて、お兄ちゃんは語りだした。


『そう。いのちの木。この国のことばでTree of Life というんだ。この木がこの世のいのちのみなもとだといわれているんだよ。すべてのいのちは、たましいは、この木とつながっているんだ』


『私』はその話の壮大さに分からず、ただお兄ちゃんの話を聞いていた。


そんな私に気づいたお兄ちゃんはまた笑って、難しい話かな、と『私』の頭をなでる。


『この木は、むかしから今もずっと生きているんだ。だからこの木のはっぱやみきからはたくさんの元気をもらえるんだよ』


するとお兄ちゃんが私の頭をなでる手のスピードを不意に緩めた。


『いつか、この木を君に送ろう。それがぼくの……』



風がざあっと吹き荒れる。


景色がどんどん見えなくなっていく。


黒く塗りつぶされるように消えていく景色の中、最後に彼が言った言葉だけ耳に残った。








それが僕の生きる希望だ、と。