翌日、レイの創った詩集のプリントを那津子が持って来た。

「はい、レイちゃんからよ」

「ああ……」

 普段でもどちらかといえばぶっきら棒だと自分でも思っていたが、この時はいつも以上だったのだろうか、那津子が具合でも悪いのかと聞いて来た。

「別に……。それより彼女は?」

「部屋で休んでいるわ」

「朝食の時も姿を見なかったが、俺よりも彼女の方を心配した方がいいんじゃないか?」

「レイちゃんなら心配いらないわ。男の人には判らなくてもいい事だから。ただ、あの子にとって初めての事だから、それでちょっと、ね」

「それって……」

「うん。私のお母さんはお赤飯炊いてくれたけど」

「そうか……」

「そう。だから、貴方もこれからは言葉遣いとか、態度に気を付けてね。あの子も、一人の女性なんだから」

「判った」

 那津子は、もう少し何か言いたげだったが、押し黙ったまま何処かへ行ってしまった。

 私の目の前に置かれた詩集。

 昨夜、彼女の部屋で一度だけ読んだ中に、気になる詩が一つあった。

 特別な言葉が書かれていた訳ではない。彼女の他の詩に比べても、どちらかといえば平凡に感じる位だ。

 それをもう一度読んでみたかった。繰り返し読む事で、最初に感じたものを確認したかった。