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その夜、再び集落を抜け出しあの泉へと向かった。

最近、周囲に絶えず人がいるようになっていた。

おそらく見張りのつもりだろう。

だけど、この程度なら人目を誤魔化して抜け出すことなど造作もないことだ。

集落の外に出てしまえば、もう後はひたすらあの泉を求めるだけ。

集落からそれほど離れていないはずなのに、そこに現れる不思議な空間。

泉はいつものように穏やかに、水面に月を捕らえていた。

泉の側の石に腰掛け一息つくと、ぼんやりと水面を眺めながらトヨが来るのを待った。

ホムラは待ちつかれたのか、隣でウトウトとしている。