このお披露目会のあと、私には一方的な友人が増えた。

 それまで、学園の女生徒たちは私に近寄ってこずに裏でこそこそ言っていたのに、正式に王太子の婚約者となったとたんにすり寄ってきたのだ。
 まあ、そんな人達を友人だとは思っていない。どうせ、目の前から私がいなくなれば、今度は悪口大会に転じるに決まっているのだから。

 群がる令嬢たちに辟易した私は、授業終わり、皆が帰り終えるまで校舎裏に逃げるようになった。校舎裏のベンチはいつも人がいない、絶好の隠れスポットなのだ。

 でもその日は先客がいた。珍しい赤毛だからすぐに分かる。ローレンだ。ノートを広げて、ぶつぶつと独り言を言っている。

「おかしいな。この間婚約発表があったんだから、ここでレオ様から話しかけられるはずだったのに」

 いつもの取り繕った笑顔とは違い、今日は真顔で足を組んでいる。あの姿勢は礼儀作法のときに先生からしこたま怒られたんだよね。生粋の令嬢ならば誰もしないのに……と思うと違和感がある。

「リンネ……あの悪役令嬢とレオ様、だいぶ仲良さそうに見えたけど、なんでだろう。今の時点では、レオ様はどの女の子にも興味ないはずなのに」

 そこで私の名前が出てきて、思わず身を隠す。
 気になると止められないので、見つからないようにこっそりと背後に回るようにして距離を詰めた。