お兄ちゃん、見ててくれた……?
あたし、がんばったよ……?
「うっ……」
思わず涙が込み上げる。
ここ最近は、勉強することで悲しさを紛らわせていた。
泣いていたのは、夢の中だけ。
朝起きると、今朝の様に頬が涙でぬれていることがよくあった。
でも、受験が終わった今、気が緩んで。
そのまま溢れだした涙は、とめどなく流れる。
『泣き虫だな、美紗は』
男の子に泣かされて帰ってきたとき。
転んでケガをして泣いていたとき。
ピアノの発表会で失敗して、悔しくて泣いていたとき。
『ほら、顔あげてごらん』
いつだって、お兄ちゃんがあたしの涙を拭いてくれた。
なのに。
あたしの涙を拭いてくれるお兄ちゃんは、もういない……。